2019年11月12日火曜日

日本で買える、レバレッジバランスファンドを調べてみた

日本で買える、レバレッジバランスファンドを調べてみた

グローバル3倍3分法ファンド(ネット上の愛称:グロ3)のヒットにより注目を集める、
理論上最強?の各種レバレッジバランスファンド。
グローバル3倍3分法ファンドのほか、比較的低コストな
・ウルトラバランス世界株式
・楽天・米国レバレッジ・バランスファンド(USA360)(米バラ360)
は注目されているが、それ以外の情報が少ない。
力技になるが大まかに調べてみた。

調べ方:ヤフーファイナンスの投資信託詳細検索を主に利用。
 カテゴリーを「バランス」「ヘッジファンド」で絞り、1151件にした。
 大まかに検討をつけて、それっぽいものを一つずつチェック。
 当てはまるものを探した。そのあと、目論見書にて詳細情報チェック。
 その過程で引っかかったものもチェックした。

今回の調査対象の条件;
・投資額の変動がある場合でも、おおむね150%以上の投資総額で運用されるもの
・2つ以上の種類のアセット(株、債券、REIT、金銀商品など)を運用先としているもの
・ネット証券や店頭で購入できるもの
・特別な制限なく購入できるもの。
 DC専用やラップ口座専用、1社専売など、購入に特殊な制限のあるものは除く。
・その他、これらの条件に入らなくとも、なんとなく気にかかるものも対象とした。

各種データは現時点(2019.11.11夜)のもの。



・米国3倍4資産リスク分散(決算は毎月、隔月、年2回の3商品あり)

信託報酬:1.1275%(税込)
運用:大和証券
総資産:20百万円、39百万円、39百万円
投資総額;3倍相当
投資先:米国株式(先物)、米国国債(先物)、金(先物)、米国REIT(基本ETF、一部先物)
投資比率:可変。リスクパリティ(4資産のリスク、つまり変動幅が同程度となるような割合での保有を目指す)
関連紹介記事(外部)
 拡がるレバレッジ型バランスファンド 米国3倍4資産リスク分散ファンド設定へ
このファンドの感想:みんかぶだとこっちが第3弾扱いか。コスト高いから見落としていた。
 +理由:米国REIT重視ならいいかも。
 -理由:投資比率が変動するので、コストがさらに高くなる可能性あり。
 -理由:他にも投資している場合、ポートフォリオが崩れる心配あり。


・米国分散投資戦略ファンド(USブレイン1)(USブレイン3)(USブレイン5)

信託報酬:1.3225%(税込)/1.6025%(税込)1.8825%(税込)
運用:三井住友DS
総資産:(2019.11.15設定。現在設定日前のため、まだ総資産は出ていない)
投資総額;それぞれ1倍/3倍/5倍相当
投資先:米国株式、米国債券、REIT、コモディティ、円建て公社債等
投資比率:円建て公社債部分とその他投資証券、で分けるとほぼ固定。
 その他投資証券、部分での投資先が可変。
 USブレイン1:円建て公社債等で80%、その他投資証券20%で合計100%
 USブレイン3:円建て公社債等で240%、その他投資証券60%で合計300%
 USブレイン5:円建て公社債等で400%、その他投資証券100%で合計500%
 株・債券・REIT・コモディティ、を保有し、その合計の4倍の円建債券を保有する様子
 機械学習したAIに、細かいことはお任せ☆
関連紹介記事(外部)
 速報! レバレッジ型バランスF 第5弾 「米国分散投資戦略ファンド」
このファンドの感想:
 +理由:レバレッジ倍率が高い。債権比率が大きく、変動幅を抑えることが期待できる。
 -理由:さすがにコストが高すぎる。
 -理由:日本国債が2%程度あった時代ならともかく、マイナス金利の状態でこの比率は過多、リターンを落としそうだ。
 -理由:最初に挙げた3ファンドを適当に買い付けたほうが好み。


・米国株式シグナルチェンジ戦略ファンド(クォーターバック)

信託報酬:1.76%(税込)
運用:三菱UFJ
総資産:(2019.11.29設定。現在設定日前のため、まだ総資産は出ていない)
投資総額;200%or0%
投資先:S&P500(米国株のみ)
投資比率:通常時現物70%、先物130% リスク時には先物ポジション解消し-70%ポジションを取り、0%相当になる
関連紹介記事(外部)
 米国株式シグナルチェンジ戦略ファンド(クォーターバック)
このファンドの感想:
 +理由:リスクコントロール付きの2倍レバレッジ。
 -理由:投資元本を割り込んだら投資者の負担になることを、赤太字で記載。
 -理由:高コスト。これなら素直にS&Pの1倍を積み立てたほうがいい。


・ダブル・ブレイン(日経名:ダブブレ)

信託報酬:2.013%(税込)
購入時手数料:3.30%(税込)(三井住友銀行。金額が増えると手数料が下がり、10億円以上で0.55%(税込))
運用など:野村アセットマネジメント、三井住友信託銀行
総資産:77791百万円
投資総額;可変。おおむね3倍前後
投資先:世界株式、世界債券、コモディティなど。
投資比率:可変。リスクコントロール戦略(ターゲットリスク戦略)、
 トレンド戦略(ダイバーシファイド戦略)という2つの戦略で決めている、らしい。
 ざっとグラフを読み取ると株:債券=1:3~1:8で変動している。
関連紹介記事(野村証券)
 野村アセットマネジメントホーム> 投資信託情報> ダブル・ブレイン
このファンドの感想:実質、ヘッジファンド。
 +理由:世界株式が20%のドローダウンをした期間を含めても、最大ドローダウンが3~4%程度。
 +理由:リターンが大きい。リスクも小さく、毎年この成果ならばコストに十分見合う。
 -理由:コストが大きい。
 -理由:アクティブに戦略を変更しているため、マネージャーの腕次第。交代による結果への影響が不安。
 -理由:販売会社がほとんどなく、購入しにくい。



調べて出てきた4ファンドのうち、3つが設定前や設定直後だった。
どおりでいろいろと調べても情報が全然出てこないわけだ。

ダブル・ブレイン の成績が素晴らしい。
この変動幅でこのリターンは人間業じゃない。
異常なほどのドローダウンの小ささ、リスク(変動幅)に対するリターンの大きさ、どちらもとんでもない。
いったいどうなっているんだろう?
販売ルートと手数料から、かなりのお金持ちに限定して販売しているようだ。

今回取り上げたどのファンドも、状況に応じて投資比率を変えるようになっている。
その分、すでに出ている3種のレバレッジバランスファンドよりコストが高い。
それでも信用取引で2.8%の金利を支払いつつETF等を保有することに比べれば低コスト。


投資信託は近年の低コスト競争によりかなりコストが低くなっている。
どのレバレッジバランスファンドも、株やREITへの投資比率は100%以下。
実質的にはそれ以外の部分、主に債券の保有と、リバランスの手間賃として
シンプルな投資信託に比べて少し高めの信託報酬を払うようになっている。

大雑把に計算して、グローバル3倍3分法ファンドだと全体の信託報酬0.5%、
株とREIT部分を普通に保有すると大体0.2%の信託報酬がかかる。
のこり0.3%の信託報酬でマイナス金利の債券とリバランスの手間賃として支払っている。
マイナス金利の債券に、100%投資規模当たり更に0.15%の金利を払っているという狂気の沙汰。
債券とその他資産の逆相関とリバランスによりリターン向上、
リスク低下効果が生まれているが、
将来、相関がプラスになってしまったらそれもなくなる。

投資は自己責任、各自が許容できる範囲でリスクをとり、リターンを得よう。

2019年11月5日火曜日

理論上最強?話題のレバレッジバランスファンドを比較する(2)

理論上最強に見える、話題のレバレッジバランスファンドを比較する。
また、不明点(企業秘密?)を探る。

前回→理論上最強?話題のレバレッジバランスファンドを比較する(1)

今回は各社公式のシミュレーション結果比較、投資先を比較。

各社のシミュレーション結果について

各社の画像を載せてみると、後発になるほど数字を大きく見せているのがわかる。

グローバル3倍3分法

約15年で10倍以上

ウルトラバランス世界株式

約20年で約21倍

楽天・米国レバレッジ・バランスファンド(USA360)(米バラ360)

30年で約112倍

期間伸ばせばそりゃあリターンの数値も大きくなるよね

シミュレーション結果まとめ

表にして、それぞれまとめると以下の通り。(円ベース)

シミュレーション3倍3分法ウルトラバランスUSA360
開始日2003.3月末1999.12月末1989.9.1
終了日2018.9月末2019.6月末2019.8.31
期間15年半(186カ月)19年半(234カ月)30年(360カ月)
年率リターン(%)16.00%17.10%17.00%
年率リスク(%)16.80%(データなし)21.70%
シャープレシオ1.05(データなし)0.8
最大ドローダウン(%)-52.80%-30.60%-41.20%
年間のリターンは大差ない。

シンプルな組成のUSA360の最大ドローダウンが
グローバル3倍3分法ファンドより低いのは驚き。
それから、ウルトラバランス世界株式はもっと情報公開してほしい。
他がしっかり公開しているリスク情報公開しないのは印象が悪い。

コスト、投資先まとめ

信託報酬、投資規模、ポートフォリオ比較。

3倍3分法ウルトラUSA360先/現
信託報酬(%)0.4840.7430.4945
レバ1報酬(%)0.161330.256210.13736





米国配当課税   推定コスト(%)(なし)0.111280.16000





実質投資規模(%)300290360
日本株式20

先物
海外先進国株20

現物
海外新興国株20

現物
世界最小分散株
80
現物
米国株式

90現物
日本REIT20

現物
海外先進国REIT20

現物
米国金先物
35
先物
日本国債4035
先物
米国国債4070270先物
ドイツ国際40

先物
イギリス国際40

先物
豪州国債40

先物
フランス国債
70
先物
分散度合いと低コストを重視するならグローバル3倍3分法。
レバレッジ掛けたまま金を保有したい場合はウルトラバランス世界株式。
世界経済の半分を占めるアメリカに集中投資するならUSA360

為替リスク概算

為替リスクのかかる資産比率は、投資資産に対してはそれぞれ概算で
グローバル3倍3分法 74.5%
ウルトラバランス 96.7%
USA360 100%
くらいかな?
先物は証拠金相当分にしか為替変動がかからないため、
実質投資規模よりも為替変動リスクのかかる資産は小さくなる。

リスク想定(半ばギャグ)

考えられるリスクシナリオを事前に挙げておき、
実現してしまった場合に慌てないよう備えておく。
1、インフレ懸念等で急激な利上げ(債券価格は下落)
 →どのファンドも債券部分が下落。利上げは株価も基本的に下落する。
 レバレッジの都合、1倍ファンド以上に下落する可能性あり
2、運営会社破綻で償還
 →日興証券、アストマックス(yahooが親会社)、楽天。 そこまでの心配はなさそう。
 資産は保全されているはずなので返還をのんびり待つのみ。
3、急激な円高による資産価値目減り
 →USA360、ウルトラバランスが外国資産レバなし100%とほぼ同等の影響を受ける。
 投下資産当たりではレバレッジ1倍と同等の影響だが、資産規模でみると1/3の影響。
 むしろ若干為替リスクを抑えられているので、「レバレッジバランス」ということを
 気にする必要はない。
4、レバレッジバランスファンドが超人気となり、1兆円を超えるファンドになった場合
 →投資先は個別株投資ではなく、各アセット全体に投資している。
 各アセットは十分に大きいので、この投資額程度では
 ファンド自身の大きさが影響してリターンが落ちる、
 ということは考えにくい。
5、4のシナリオから30年たち、100倍(100兆円)まで順調に育ってしまった場合
 →グローバル3倍3分法ファンドがこの規模になった場合、明らかな問題が発生する。
 日本の上場REITの時価総額(2018.5月末時点)が12兆円
 対してこのファンドだけでの日本REITへの投資額が20兆円
 上場REITの時価総額を、このファンドだけで大きく超え、167%にも上る。
 何の工夫もなく運用した場合、高値掴みするのは明らか。
 そのほか、レバレッジバランスファンドの影響により投資先各資産の連動性が高まり、
 投資の分散効果が低下し、リスクが上昇することが考えられる。
 参考までに年金の運用資産額を調べると、が2019年9月末で160兆円ほど。
 この年金運用額であってもそれなりに日本株が上下するため、それ以上に影響を
 及ぼすとなるとどこかのファンドに逆に食い物にされてリターンも減るだろう。

30年で112倍、とか堂々と書いてあったら、リスクシナリオの一つとして、
念のために考えてもいいよね。
1つのファンドの投資額で現状の1アセットの時価総額を超えることを危惧するとか、
現段階ではギャグにしか見えないけれど。